2009年7月31日金曜日

岡村民夫「ヒロシマの岸辺を歩く」@『みすず』8月号


『みすず』が先月号からエマニュエル・リヴァの写真(小社刊『HIROSHIMA 1958』より)を表紙に採用しているのは既報済みですが、最新号(2009年8月号/574号)には、表象文化論の岡村民夫さんによるエセー「ヒロシマの岸辺を歩く──リヴァ、レネ、デュラス」も掲載されています。ドミニク・ノゲーズによるデュラス・インタビュー集『デュラス、映画を語る』(みすず書房)の翻訳も手掛けられている岡村さんには、昨年末のリヴァ来日のさいにもご協力いただきましたが、その後、この4月にパリで開かれた写真展も訪れたばかりか、リヴァが撮った地点を探し当てるといったこともされておりまして、それらの報告もまじえつつ、広島の過去・未来・現在を、あるいはその映画と写真を往還するエセーになっています。日本語版(小社刊)とフランス語版(ガリマール刊)との比較などもあります。ぜひお読み下さい。全11頁の力作。



エマニュエル・リヴァ展@大阪ニコンサロン、29日をもって無事終了いたしました。ご来場いただいたみなさまに御礼申し上げます。

2009年7月30日木曜日

2009年7月28日火曜日

BOOK CATALOGUE


小社の刊行書籍カタログ最新版(2009.08)が出来ました。カタログといっても四つ折りのリーフレットですが。写真は港千尋。31日より発売される『霊と女たち』には挟み込んであります。続刊予定2点も掲載。

……最新刊・続刊合わせて、“スピリチュアル3部作”とかなんとか。

RIP MC



http://www.youtube.com/user/MerceCunninghamDance

98年が最後の来日公演。見逃したのが悔やまれます。

2009年7月27日月曜日

続刊広告

青土社の『現代思想』には隔月で広告を掲載しておりますが、今回の2009年8月号には続刊案内も若干含めました。ご覧いただければ幸いです。刊行が近づきましたら、当欄でもあらためてご案内いたします。また、『みすず』2009年8月号(まもなく刊行のはず)にも広告出稿しておりまして、こちらについては届きましたらあらためてご紹介します。



『現代思想』次号(9月号)は「特集:ガリレオ」だそうで。世界天文年ですからね。大阪ではこういう展示も通年で開催されています。

2009年7月25日土曜日

Stoned Soul Picnic



引用──
「ストーンド・ソウル・ピクニック」とは、二十歳を過ぎたばかりの一九六〇年代後半の頃、すでに数々の名曲を書き上げていたユダヤ系アメリカ人のシンガー&ソングライター、ローラ・ニーロの傑作のひとつである。ヴェトナム戦争とヒッピー運動の全盛期だった時代の余韻をとどめるように、「ラリった」(stoned)という文句がついてはいるが、いま思えば若くして多様な音楽カテゴリーを横断した「マルチエスニック」で「ボーダレス」な彼女の音楽は、「主」や「神」、「悪魔」、「魂」や「霊」といった語彙が頻出する自作の歌詞にも表出されているように、深くスピリチュアルな内容をもつ世界観が語られていた。「魂のピクニック」とはまさしく、スピリチュアリティを渇望しながらも翻弄される現代を生きる者たちにとって、今だからこそもっと魂を解放しなさいという「福音」のようにも聴こえる。
ローラ・ニーロは「天才ソングライター」としてもてはやされた初期の傑作群を讃える声が多いけれども、澄みきった叡智と情愛は真に経験を重ねた者のみに許される恩寵であることを晩年のパフォーマンスは教えてくれる。今年(二〇〇七年)は彼女が誕生して六十周年、乳がんで死去して十周年になる。「霊と女たち」の最後をしめくくるにあたり、これ以上にふさわしい名前はないと思う。
(杉浦勉『霊と女たち』、234─235頁)

2009年7月24日金曜日

「黒いボストン・フレームの眼鏡」

引用──
(……)杉浦さんの示唆を受け、早速ボラーニョの本を何冊か取り寄せた。翌々年には大学院の授業でもある小説を読んだ(「お、ボラーニョを読むなんざ、柳原も趣味がいいじゃないか」杉浦さんはぼくの授業を取っていた学生に言ったそうだ。その場にいなかったのが悔やまれる。それはあなたが教えてくれたんじゃないか、と返せなかったのだから)。取り寄せて気づいた。ボラーニョは杉浦さんと同年の生まれで、二〇〇三年に死んでいる。そして何より、同じようなボストン・フレームの眼鏡をかけている! フレームの太さは幾分細めに見えるし、レンズも少し丸みが強いように見える。つまり、むしろ「ロイド眼鏡」と呼びたくなるくらいの形状ではあるけれども、ボラーニョのかけるその眼鏡は、間違いなく杉浦さんがかけていたのと同種だ。ボストン・フレームだ。(……)

(柳原孝敦「黒いボストン・フレームの眼鏡──杉浦勉さんのこと」、『水声通信』27号、2008年12月、58─62頁)

柳原さんには、杉浦勉著『霊と女たち』の校閲協力に携わっていただきました。サイトはこちら、ブログはこちら



『霊と女たち』は、早い所では7月31日(金)より書店店頭に並ぶ予定です。

2009年7月22日水曜日

「「ニュートップス」を失ったら新宿のどこで打ち合わせをすれば良いのだろう」

たった今、某アトリエの日記経由で、ひと月遅れで知ったわけですが……。

http://www.excite.co.jp/News/magazine/MAG36/20090710/136/

ほんとに。同業各位、いかがか?

2009年7月14日火曜日

2009年7月13日月曜日

全く新しい

http://expoexpo.exblog.jp/9978483/

人選これで良いわけ? 私は行けないので報告待つ。

「vol.1」?

ドキュメンタリー作家 土本典昭

小社とは直接は関係のない話(たぶん。いまのところ)。すでに始まって2週間ほど経っていますが、あらためてご紹介。どん!

(クリックすると大きくなります)

そして、フライヤーは届いていませんが、上映プログラム(小ホール)も発表されています。どん!

1 ある機関助士(37分・16mm・カラー)/ドキュメント 路上(54分・35mm・白黒)
2 シベリヤ人の世界(99分・35mm・カラー)
3 パルチザン前史(121分・16mm・白黒)
4 水俣 患者さんとその世界(167分・16mm・白黒)
5 留学生 チュア スイ リン(51分・16mm・白黒)/水俣レポート1 実録・公調委(48分・16mm・白黒)
6 水俣一揆 一生を問う人びと(108分・16mm・白黒)
7 医学としての水俣病 第一部 資料・証言篇(82分・16mm・カラー)
8 医学としての水俣病 第二部 病理・病像篇(103分・16mm・カラー)
9 医学としての水俣病 第三部 臨床・疫学篇(91分・16mm・カラー)
10 不知火海(153分・16mm・カラー)
11 水俣病 その20年(43分・16mm・カラー)/わが街わが青春 石川さゆり水俣熱唱(43分・16mm・カラー)
12 水俣の図 物語(112分・35mm・カラー)
13 海とお月さまたち(50分・35mm・カラー)/水俣病 その30年(43分・16mm・カラー)
14 VOICES OF YOUNG JAPAN [『日本の若者はいま』英語版](30分・16mm・カラー)/偲ぶ・中野重治 葬儀・告別式の記録 1979年9月8日(55分・16mm・白黒)
15 原発切抜帖(45分・16mm・カラー)/はじけ鳳仙花 わが筑豊 わが朝鮮(48分・16mm・カラー)
16 海盗り 下北半島・浜関根(103分・16mm・カラー)
17 よみがえれカレーズ(116分・16mm・カラー)

ぜんぶ観るがよろし。通うがよろし。上記の転載元のNFCのページには特に記載がありませんが、企画者から聞いたところによると、
「わりとほぼニュープリント。」
だそうです。この演習の受講者だけじゃなく、みなさん行きましょう(ちゃんとこうやって大学の授業で取り上げるのはエライね)。

で、ツチモト知らない、という方には、こちらが参考書(の勝手連フライヤー)。どん!

(クリックすると大きくなります)

映画史ですよ。映画史。



ドキュメンタリーついでに、「まだ載っていない」とお伝えした企画が、いつの間にか載っていますね。……でも、小声で呟いておきますが、他にもあるかもよ! たぶん!

リヴァ展、港千尋セミナー@大阪

既報の通り、今週木曜日から2週間にわたって、ニコンサロン大阪にて「エマニュエル・リヴァ写真展[HIROSHIMA 1958]」が開催されますが、17日(金曜日)には本展の監修者であり、小社刊の写真集『HIROSHIMA 1958』の編者のひとりの港千尋さんによるトークが展覧会会場にておこなわれます。ぜひ足をお運び下さい。

フォトセミナー
場所 ニコンプラザ大阪 セミナールーム
日時 2009年7月17日(金) 午後7時〜8時30分
講師 港千尋(写真家・多摩美術大学教授)
開催写真展 エマニュエル・リヴァ写真展[HIROSHIMA 1958](7月16日〜29日)
参加費 無料
※予約不要
http://www.nikon-image.com/jpn/activity/salon/event/seminar.htm



ところで、この翌日には、こんなトークイヴェントこんなトークイヴェントが控えています(ダブルヘッダー!)から、大阪で飲み過ぎないように>港さん。西洋美のほうは、他の講師も豪華ですね。この「かたちは、うつる」展は、版画のコレクションのみで構成する展覧会としては同館初の試みだそうです。ル・コルビュジエばかりに気を取られがちですが、こちらにも行きましょう。

【近刊】杉浦勉『霊と女たち』

今月末刊行予定の書籍の概要です。発売日が確定いたしましたらあらためてご案内いたします。【→追記:7月31日発売です。】


『霊と女たち』
杉浦勉=著

もうひとつの「主体性」の系譜学

スペイン異端審問時代の神秘体験から20世紀メキシコ/アメリカ国境の民衆信仰まで、霊的な経験のなかで生と世界とをつなぐ知を紡いでいた女性たち。幻視する彼女たちの語りを、バタイユ、ラカン、イリガライ、フーコーらの所論、そしてチカーナ・フェミニズムの言説/実践と読み合わせながら、霊性とセクシュアリティとポリティクスとを切り結ばせる。一つの海と七つの世紀を越えて呼び覚ます、女たちによる知と主体の系譜学。

2009年7月31日発売

四六判上製288頁
装幀:間村俊一/写真:港千尋
定価:本体3200円+税
ISBN978-4-900997-24-0

[目次]
幻視する女たち──スペイン異端審問とジェンダー/セクシュアリティ
霊と女たち
 1 ふたりのテレサ
 2 恋するロヨラ
 3 グワダルーペ村の母と子
 4 テレサ、世界の霊性
 5 水と合一──テレサ、イリガライ、セクシュアリティ
 6 なぜ子を殺したか
 7 黒いスピリチュアリティ
 8 ビラヴドを癒す
 9 魂のピクニックを
彼女にはこの恐怖がある 名前がないということの──グロリア・アンサルドゥーアとチカーナ・フェミニズム
ミシェル・フーコーの霊性

[本書より引用]

主体が真理へ到達するための諸条件が認識の行為のみとなった瞬間から、真理の歴史の近代が始まってゆく。同時にここから、過去に強大な影響力をもっていた「霊的な知」は、「認識的な知」によって次第に限界づけられ、覆い隠され、おそらく十六、十七世紀には最終的に消去されることになるだろう。しかし重要であるのは、とフーコーはいう、「世界にとっての知」と対峙、対立するように、「人間存在や魂や内面性についての知」を編成することではない、そうではなくて「ある一定の霊性の構造が、認識、認識の行為、その条件と効果を、主体の存在そのものの変容と結びつけて」いる歴史、いわばふたつの知の様式が主体において重層する歴史なのである。ひとりのテレサに代表されるスペイン異端審問時代の女性神秘家たち、そしてもうひとりのテレサが先駆してみせた、現在のメキシコ/アメリカ国境にまたがる「ボーダーランズ」に広く伝播、分布する民衆宗教の女性実践家たちの歴史は、フーコーのこの主題が身体化され、社会化され、言説化される歴史の証言として読むことができる。ふたりのテレサは「霊的な知」を「実践、経験」することにより、「認識的な知」の企てる限界と専制に抗して、真理の主体を生きぬいた女たちである。(55─56頁)

[著者]
杉浦勉(Sugiura, Tsutomu)
1953年─2008年。
スペイン語圏文学・文化研究。東京外国語大学教授。
編著書に、『ポストフランコのスペイン文化』(水声社、1999年)、『シンコペーション──ラティーノ/カリビアンの文化実践』(共編著、エディマン/新宿書房、2003年)。訳書に、アレホ・カルペンティエル『光の世紀』(書肆風の薔薇[水声社]、1990年)、同『追跡』(水声社、1993年)、フェルナンド・デ・ローハス『ラ・セレスティーナ』(国書刊行会、1996年)、『ルイス・ブニュエル著作集成』(思潮社、2006年)。

2009年7月9日木曜日

2009年7月6日月曜日

第21回「写真の会」賞ご報告


おかげさまで、「写真の会賞」展は昨日無事終了いたしました。多数の方にご来場いただきました。ありがとうございます。4日の授賞の日に発行された、『「写真の会」会報』66号(上掲の画像はクリックすると大きくなります)に、今回の「写真の会賞」の詳細が掲載されております。以下、引用──

──

第21回「写真の会」賞
『北海道』(作者:森山大道/発行:RAT HOLE/2008年)
『小島一郎写真集成』および小島一郎研究(作者:小島一郎/監修:青森県立美術館/発行:株式会社インスクリプト/2009年)

▼賞状のことば
写真表現がもっとも豊かな社会的ふくらみに彩られた時代、
気鋭の新進として嘱望されながらも早世した写真家の生涯と活動に
緻密な光を当てた『小島一郎写真集成』とその作家研究に対して。

▼光田由里(「第21回写真の会賞決定」より)
(…)2009年初頭に出版された『小島一郎写真集成』は、こうした再評価の流れの結実であり決定版としてあると同時に、小島の写真世界の魅力を十全に立ち上がらせて、彼の写真のさらなる探求へと私たちを招く1冊である。写真家の郷里の美術館での回顧展を機に、ご遺族と版元インスクリプトをはじめ関係者の万全の協力のもと、担当学芸員・高橋しげみ氏の調査による資料を編纂した上で、作品の魅力が生きたうつくしい1冊に仕上がった。発表歴、文献目録、そして作家の活動のドキュメントは、作家研究の基本でありながら、これまでの写真集ではあまり重視されたこなかった部分である。(…)『小島一郎写真集成』はその名が示すとおり、こうした研究と写真作品とが協働した、熱気ある出版物となっている。(…)

▼伊勢功治(「[第21回写真の会賞]選考会報告」より)
(…)今回の『小島一郎写真集成』および小島一郎研究の受賞は、1964年に39歳という若さで亡くなった後、45年を経て、今なお写真家としての魅力を放っていることを証明するものだろう。回顧展としての写真展と集大成としての写真集は、決して過去を振り返るだけのものではなく、「現在」という軸からの新しい光によって照らし出し、また一度深く読み取る契機となるものである。(…)『小島一郎写真集成』は特に巻末の高橋しげみの論文「北を撮る──小島一郎」が秀逸である。地道な資料収集と取材、そして研究の成果の表れ、と言ってよい。写真家小島と津軽、下北、東京、そして北海道。それぞれの土地が小島の運命を決定づける。また、高橋は小島の内面の動きにも慎重に触れている。小島一郎をより深く知るための資料としての大きな価値があるといえる。(…)

▼深川雅文(「選評」より)
(…)もうひとつの授賞、『小島一郎写真集成』と小島一郎研究について。わが国の写真美術館構想の実現からすでに20年以上を経て、すでに写真は文化芸術のジェネラルな領域に空気のように浸透してきた。そうした写真を巡る了解の深まりを背景に、写真家の新たな評価と発掘が求められている、そういう時期に入ってきたのかもしれない。写真家は、その生まれ育った土地、あるいは暮らした土地で、新たにしかるべき評価を与えられ、受容されるべきである。その好例が『小島一郎写真集成』と小島一郎研究である。これは写真集の隆盛とならんで、写真文化の深化を実感させる際立った仕事であった。青森の美術館でなければ実現しえない、小島一郎の仕事の意味と意義の解明というものがあるはずである。この仕事は、その解明と定着を非常に高いレベルで行ったと言える。(…)

──

『小島一郎写真集成』に関連する箇所を引用いたしましたが、会報ではもちろん森山大道『北海道』についても論じられています。会報の入手に関しては、写真の会にお問い合わせ下さい。なお、photographers' galleryのショップでも販売されています(66号は現時点で未入荷)。

2009年7月5日日曜日

第21回「写真の会」賞授賞式




大盛況でした。ご来場いただいたみなさまに深く感謝申し上げます。(ご来場いただけなかったもののご支援くださった方々にも御礼を。)受賞の詳細は追ってご報告いたします。ともあれ、展覧会は本日・日曜日までです!

2009年7月4日土曜日

Occupation 101

さる方からお知らせいただいたので、こちらでも。今日ですが。「カルチュラル・タイフーン2009」の一企画。私は行けない(さすがに受賞者が授賞式に欠席できない)ので、ご報告を待つ。

特別プログラム
パレスチナとの連帯──イスラエルのアパルトヘイトを終わらせるためのアメリカにおける試み
2009年7月4日(土曜日)
東京外国語大学 研究講義棟 115室

15:00-16:30 映画上映”Occupation 101”
16:40-17:40 セッション

発表者:重松セツ(カリフォルニア大学リバーサイド校)
応答:鵜飼哲(一橋大学)
司会:樹本健(コーネル大学)

http://www.cultural-typhoon.org/2009/jp/cinema-typhoon/

映画についてはこちら:
http://www.cultural-typhoon.org/2009/jp/cinema-typhoon/c/

2009年7月2日木曜日

高橋しげみ「小島一郎の「東京」」

小島一郎+森山大道展(「写真の会賞」展)、残すところあと3日です。どうぞお見逃しなく。

会場で配布しているリーフレットに掲載した、高橋しげみさんによるテキストを以下に転載いたします。今回のPLACE Mの小島スペースの展示構成も高橋さんが手掛けています。

──────────

小島一郎の「東京」 
第21回写真の会賞[写真の会賞展]によせて

高橋しげみ(青森県立美術館学芸員)

今年1月10日から3月8日にかけて、青森県立美術館で「小島一郎──北を撮る」展(以下「北を撮る」展)が開催された。写真家の郷土である青森での回顧展は、以前も何度か開かれてきたが、全生涯にわたる仕事を包括的に取り上げたものとしてはそれが初めてであった。
「北を撮る」展は青森のみでの開催となったが、写真家が人生の大半を過ごし、また多くの写真の被写体となった地とほど近い地場で写真を提示するにあたっては、そこに生きる人々や場所自体の記憶と響かせながら、消費という態度からできるかぎり離れた部分において写真を再起させることを期していた。場所と同様、時節も重要な構成要件であった。厳寒時の撮影を好んだ小島一郎の、現在残る写真の半分以上は雪景である。雪と凍れの体験が直截的であればあるほど、写真はより多くのことを語りかけてくるはずだ、と会期は冬と最初から決めていた。
第21回写真の会賞の対象となった『小島一郎写真集成』と「研究」は、こうした展覧会を着地点に見据えた一連の働きそのものと、そこから生み出されたものに相当する。したがってこのたびの受賞展における展示は、「北を撮る」展の延長線上に位置することが求められる。小島一郎が東京と深いつながりを持った写真家であるのは幸運だった。「1初期」、「2津軽」、「3東京」、「4下北」の大きく4部で構成された青森の展覧会から「3東京」を切り出して見せること、それが縮小再生産を避けつつ青森と同等の事柄を東京において生起させるための、最善にして唯一の方途と思えた。300点以上におよぶ同展の全出品数に照らすと、「3東京」はその5パーセントにも満たない小さなセクションであったが、小島のように一つの「場所」を背負った写真家が、自らが拠って立つ地を移そうとした時に見えてくることは大きかった。被写体との距離感や「場所」をめぐるまなざしの力学の変化、それに伴う動揺は、写真家がこれまで依拠してきたものをあぶり出すからだ。
名取洋之助に見出され才能を発揮し始めた小島一郎は、1961年(昭和36)、プロのカメラマンを目指して東京に移り住む。同年に発表した「下北の荒海」でカメラ芸術新人賞を受賞し、幸先のよいスタートを切った。翌年に開催した第2回個展「凍ばれる」も話題になったが、追い風を期待したい写真界の重鎮からは手厳しい評価を受ける。その後、東京や東海道沿いなど新たな被写体を試みるも、真骨頂を示すにはいたらず、青森で撮りためた作品を発表し続けることになった。募る焦燥感の中、東京での仕事の不振から脱け出すべく、北海道の四季の撮影を決意。1963年冬、現地に赴くが、撮影は難航する。繰り返される過酷な撮影行に、体調を崩した小島は、期待した成果を得られぬまま青森に戻り、1964年7月、39歳の若さで急逝した。
東京時代に『カメラ毎日』で小島を担当していた編集者、宮本公古は写真家の東京での仕事をこう振り返る。「東海道五十三次、東京の夕日くらいの他は、目新しい作品はなく、他はいずれも故郷青森に材を得た、いわば津軽物の発表であり、彼の上京後の成果と言えるだけのものは遂になかったのではないか」(『カメラ毎日』1973年2月号)
写真家の死から45年が経過した今、再び小島の写真が東京に現れる。強烈な辛酸の記憶を引き連れて。その写真を観る者のまなざしは「凍ばれる」展の会場にいた観者のそれとはもはや同じであるまい。さもなくば、この展示が失敗しているということだ。

Copyright (C) Shigemi Takahashi 2009

2009年7月1日水曜日

『みすず』7月号表紙はエマニュエル・リヴァ

月刊誌『みすず』(みすず書房)最新号、2009年7月号。


お分かりでしょうか。表紙の写真は、エマニュエル・リヴァ撮影の1枚。小社刊の写真集『HIROSHIMA 1958』所収のカットです。8月号、9月号も引き続きリヴァ。同誌の入手方法についてはこちらをご参照ください。

『エル・スール』上映最新情報(7月以降)

引き続き以下の映画館で、ビクトル・エリセ監督作品『エル・スール』『ミツバチのささやき』の上映が予定されています。お近くにお住まいの方は、この機会にぜひどうぞ。上映時間など詳細は、劇場にご確認下さい。小社刊行の原作本『エル・スール』も好評発売中です。

7月4日(土)〜10日(金)
シネマ・ジャック&ベティ(横浜)
http://www.jackandbetty.net/

7月11日(土)〜24日(金)
シアターシエマ(佐賀)
http://ciema.info/

7月25日(土)〜31日(金)
名古屋シネマテーク
http://cineaste.jp/

8月1日(土)〜14日(金)『ミツバチのささやき』
8月1日(土)〜7日(金)『エル・スール』
※2日(日)と12日(水)は休映。
【日程再修正しました(7/19記)】
シネマ尾道
http://www.cinema-onomichi.com/

【8/11追記】
8月8日(土)〜8月14日(金)
『ミツバチのささやき』1日2回上映
フォルツァ総曲輪(富山市)
※12日(水)は休映。
http://www.tmo-toyama.com/forza-sogawa/index.html

【7/24追記】
8月25日(火)〜30日(日)
滋賀会館シネマホール
http://www.rcsmovie.co.jp/shiga/
http://cinemakyoto.shiga-saku.net/e304652.html
★8月20日(木)〜23日(日):「エリセ監督がこの2作を撮るに至る、とっても影響を受けた監督の名作日本映画」であるところの溝口特集、なんと500円!

【8/11追記】
8月24日(月)
10時30分から『ミツバチのささやき』1回上映
テアトルタイムズスクエア(東京・新宿)
http://www.cinemabox.com/schedule/times/index.shtml
★劇場閉館にあたっての特別上映。

9月5日(土)『ミツバチのささやき』
9月11日(金)『エル・スール』
エンギザ(松本CINEMAセレクト)
http://www.cinema-select.com/

その後、京都シネマ長野松竹相生座ロキシーでの上映も調整中との情報がそれぞれのウェブサイトに掲載されています。
http://www.kyotocinema.jp/
http://www.naganoaioiza.com/